2021年7月6日 編集後記

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またサッカーの話題で恐縮だが、欧州選手権で期待はずれな結果に終わった仏代表の主力選手であるアントワーヌ・グリーズマンとウスマン・デンベレの両人が日本人に対して人種差別的な発言を行っていたことが判明してネット上で話題を提供している。グリーズマンはかねてよりLGBTの権利擁護などに熱心で、政治的にコミットするプレイヤーとして知られるだけに、意外感も誘っているようだが、サッカー選手のコミットメントというのは通常、単なる宣伝やマーケティングの類であって、思想的な根拠があるわけではない。自分の人気を維持し、広告塔としての価値を引き上げるために世論のトレンドを表面的に追っているに過ぎない。そして、いまの「差別反対」マーケットで価値が高いのは、LGBTと黒人の権利擁護であって、アジア人に関しては権利擁護よりもむしろ罵倒や差別がトレンドだから、両プレイヤーが日本人に対して心置きなく侮蔑的な言辞を弄しているのは特に驚くに値しない。今後に世論の流れが変わってアジア人の株が高騰すれば、もちろん態度を変えるだろうが、それとてなにか信念があってやるわけではない。またデンベレに関しては黒人の多くが抱いているアジア人に対する優越感や差別意識も働いているのかも知れない。アフリカ系移民の多い地区で暮らしていると、よく出会う現象だが、黒人は白人による差別の被害者であるにもかかわらず、自分もアジア人に対して差別意識が強いことが多い。さらにより一般的に、英語と違ってフランス語だとどんな失礼なことを言っても日本人にバレる可能性は限りなく低いので、相手にわからないだろうとおおっぴらに悪口を言うフランス人は珍しくない。一昔前に、フランスの人気男優が日本を訪れた際にステージ上で暴言の数々を口にしたのに、その部分は翻訳されなかったので、意味もわからずに女性ファンが嬌声を上げ続けていた、とその場にいたフランス人から聞いたことがある(その人自身も日本人に対して冷笑的だった)。フランス人はそういう傲慢で意地の悪い面があるので、黒人と白人のフランス人代表が日本人に対して差別的な発言を行うのは、いわば「普通の光景」に過ぎない。日本人はその程度のことでショックを受けたり、傷ついたり、怒ったりすべきではない。涼しく笑ってやり過ごせばいいのである。差別意識はいわばフランス社会の必需品であり、学校でも社会でもアフリカ系やアジア系の移民出身者に対する明白な差別があるが、差別には被差別者の奮起を誘うスパイスのような効果もある。もし差別がなかったならば、フランス代表チームにこれほどたくさんの優れた移民系プレイヤーが揃うこともなかっただろう。