日本でも欧州でもオーバーツーリズムが問題になっている。観光客のマナーの悪さもさることながら、観光
地の受け入れ能力を超えた観光客が過剰に集中することで否応なく発生する諸問題が以前よりも顕著に可視
化されている。人混みや交通渋滞、物価や家賃の高騰などが住民を苦しめ、観光業の利点(移転リスクのな
い雇用の創出など)を弊害が大きく上回るようになった。もちろん、観光の功罪を経済的・政治的な側面か
らだけ考えるのは片手落ちで、普段の生活空間を離れて、非日常の空間に一定期間だけ身を置いてみること
が各々の観光客の心身にもたらす好影響といったものも考慮する必要はあろう。どんなに表面的なコンタク
トであっても、外国の風景、雰囲気、人々、文化、言語などに触れる体験は、何らかの形で、観光客の世界
観に作用するに違いない。それが世界平和に貢献する、といった見方も可能だろう。しかし、問題はやはり
「過剰さ(オーバー)」なのだ。過剰が生じるのは、人々が同じ目的地を目指してしまうからだ。志向の画
一性が過剰を招くのであれば、解決策は志向の多様化にありそうだ。多様性を重視するなら、こういうとこ
ろにも教育の力を注いでもらいたいものだ。他人と同じ場所に行くのはつまらない、自分だけの観光地を見
つけたい、と感じる人が増えたら、オーバーツーリズムも自然に解消するのではないか。もちろん、「他人
と違うことをしたい」と全員が考えたら、これはこれで画一発想になってしまうわけだが。。。