仏アトス(情報処理)は5月14日、事業の立て直しに向けた戦略プランを公表した。国際事業を整理して経営を立て直し、2028年時点で年商90億-100億ユーロと営業利益率10%の達成を目指す。
アトスは経営難に陥り、紆余曲折の末に、債務再編で債権者団と合意し、自力での経営立て直しに乗り出した。新たな戦略プランは回復に向けた行程表となる。同社はこの中で、アジアや中東など、シェアがごく低い国からは撤退し、地域ごとに6つのハブを設ける形で国際事業を再編する方針を示した。主力市場の米国などが優先される。なお、同社は2024年時点で70ヵ国に進出していた。国際事業の見直しに伴い、人員削減も不可避となる。同社は3年前に世界で11万人程度を雇用していたが、この3月末時点で7万4000人まで絞り込んでいた。2026年には6万人を割る見通しだが、同社は、十分な事業規模の確保も目標に掲げており、事業の練り直しを経てその後は従業員数を増やしてゆく。仏国内の雇用(2024年に1万人)も、大きな変化なしに維持される見通し。経費節減では、2028年時点の目標として、グループの事業費率を2ポイント引き下げて5%とすることを目指す。2024年に4%まで下がった営業利益率を同年に10%まで引き上げるのが目標となる。戦略プランの費用総額は7億ユーロ(うち4億ユーロを2025年中に支出)の予定。2026年にはキャッシュフローを黒字化することを目指す。
2025年には、事業売却などの影響もあって、売上高は前年比10%減の85億ユーロまで後退する。これで底を打って、売上高は段階的に回復すると予想。事業展開では、テック・ファウンデーションズの名称の下にまとめた情報処理などサービス業務を「アトス」名義に戻し、「データ・AI」部門やクラウド事業などを、Evidenの名の下にまとめた事業部門からアトスに移す。これでグループ事業の9割強はアトス名義となり、Evidenは、「サービス事業」を失い、「プロダクト事業」(サイバーセキュリティ、クリティカルシステム、AIビジョン、スパコン)のみが残る。スパコン事業は、核抑止力シミュレーション技術の兼ね合いもあり、APE(フランス国家出資庁)の出資を仰ぐことになっているが、まだ実現していない。アトスは本体に戻るデータ・AI部門を成長力の柱とする計画で、2026年にも企業買収に転じて攻勢をかける構え。