フランスとポーランドの両国政府は5月9日、協力協定の調印式を行った。対ドイツ戦勝利80周年にあわせて、ポーランドにゆかりのある仏ナンシー市にトゥスク首相を招いて調印式が行われた。ちなみに、同日にはロシアのプーチン大統領がモスクワで戦勝80周年記念の式典を大々的に挙行し、中国の習国家主席などの列席を得ていた。
フランスとポーランドは協力協定において、一方の国が攻撃を受けた場合に支援を行うことを取り決めた。同様の取り決めは、第2次世界大戦の直前となる1939年5月にも結ばれたが、この時は、同年9月のナチスによるポーランド侵攻でもフランス側が動かなかったという前例があり、特にポーランド側にわだかまりが残っていた。今回の協定は、両国がロシアの脅威という新たな状況の中で、再び軍事協力を約束するものとなった。両国は、北大西洋条約機構(NATO)の条約第5条と、欧州連合(EU)条約第42条に基づいた相互援助について、実践面で実効が伴うものとすることを約束したものだと説明しており、両条約を置き換えるものではないことを強調している。フランス側によると、ポーランドが侵攻された場合、1ヵ月以内に5000人の仏軍兵力を投入することが可能だという。締結されたナンシー協定に明記はされていないが、マクロン大統領は、必要な限りでフランスの核抑止力を含めた協力になると言明した。
今回の協定においては、フランス側の要求にポーランドが応える形で、将来の軍備調達において「欧州優先」を旨とすることが明記された。ポーランドは従来、軍備調達においては米国を優先してきたが、協定においては、「段階的に」欧州製の軍備の調達を推進することを約束した。フランス側では特に、欧州の軍事主体性の強化に向けた一歩になると期待している。