欧州天然ガス価格(オランダTTF先物価格)が8月22日 (月)、276.75ユーロ(1MWh当たり)という過去最高の終値をつけた。これは過去10年間の平均の15倍という高水準。ロシアのガス大手ガスプロムが19日(金)に、欧州向けにガスを供給する主要ガスパイプライン「ノルドストリーム1」の操業が「保守」のために8月31日から9月2日まで3日間停止されると予告したことが急騰を招いた。
オランダの大手銀行INGのアナリストは、数日間の操業停止自体は欧州のガス供給に根本的な変化をもたらすわけではないが、9月3日以降に供給が再開されるかどうかに関する不確実性が市場の懸念を招いていると指摘。ガスプロムは停止前と同水準の供給(パイプラインの容量の20%)を再開すると示唆しているものの、ドイツの天然ガス・石油・地熱連邦協会(BVEG)はロシアが同パイプラインを再開しない可能性や、ほかの欧州向けパイプラインを閉鎖する可能性などを警戒している。状況はすでに破局的だとして、欧州の首脳陣に早急の対応を求める声も専門家から出ている。
欧州の電力価格はガス価格と連動しているため、ガスの高騰は電力の高騰も招いており、欧州電力価格は700ユーロ(1MWh当たり)を突破した。過去20年間の平均が50ユーロ前後であることを考慮すると、これは異常な高値である。
INGは欧州のガス調達量が小さいために、価格は需要の破壊が起きるまで高止まりすると予測している。なお、金属など電力消費の大きい産業部門ではすでに需要破壊が発生している。
ガス価格の高騰が欧州経済の後退を招く懸念も強まっており、外為市場ではユーロが下落して、対ドルでパリティ(1ユーロ=1ドル)を割り込み、20年ぶりの安値を記録した。欧州の株式市場もガス価格の高騰を嫌気して22日に軒並み下落した。パリ株式市場CAC40指数は1.8%安、フランクフルトX-DAX指数は2.32%安となった。