フランスの極右政党RNを率いるルペン氏が同党の架空雇用事件で厳しい有罪判決を受けた。欧州議会の資金を組織的に横領していたと認定され、禁固4年を言い渡され、さらに5年間の被選挙権停止が加わった。同氏は潔白を主張して控訴する意向だが、被選挙権停止は発効するので、2027年に予定される次期大統領選挙での立候補はほぼ不可能になった。RNと同氏はこの判決を政治的なものだと批判し、RNによる政権獲得を司法界が不当に阻止しようとしていると、陰謀論的な主張を展開している。もちろん裁判官も(政治的)人間であり、また裁判官の多くは左派的立場を支持していることは公然の秘密だから、判決に政治的バイアスが皆無とは言い切れない。ルペン氏は、政治家の支持率調査でライバルたちに大差をつけてトップに立ち、4度目の挑戦となる次期大統領選挙での当選が現実味を帯びていただけに、悔しい思いはよく分かる。同氏の指揮下でRNが反ユダヤ主義と決別し、今やイスラム主義左翼に対抗してユダヤ人を保護する政党に変身したことも評価できる。既存の体制に不満を抱きRN以外にもはや頼れる政党はないと追い詰められた気分になっている多数の有権者の失望や憤りも当然だ。ただし、ルペン氏とRNは今回の判決を本気では予想していなかったとの見方もあり、同氏の被選挙権が停止された場合の対応準備もできていない感がある。ルペン氏は脇が甘い、という印象はかつての大統領選挙でのマクロン氏との討論会でも鮮明だった。フランスの
大統領は核兵器のボタンを握る。専門家の意見によると、ルペン氏が被選挙権を回復する可能性はゼロではないらしいが、その場合でも、隙の多そうな同氏に核のボタンを預けるのはいささか躊躇される。