中学生の企業研修の悲しい実態

投稿日: カテゴリー: 日刊メディアダイジェスト欧州レポート

フランスでは、中学校の最終学年の生徒に企業研修が義務付けられている。通常、12月から2月までの期間に、5日間に渡り受け入れ先の企業で職業の「観察」を行うという趣旨で、レポートを学校に提出する。研修先は生徒が自ら見つけてくることになっている。まずそこからが勉強ということなのだろうが、実際には、両親のコネで何とかねじ込むというのが常態で、結局は社会的な序列がそのまま維持されるのだなあと中学生に実感してもらうイベントとして機能している。郊外の民衆地区などに住み、フランス人らしくない名前であれば猶更で、弁護士志望でパリの弁護士事務所にたくさん志望書を送ったが、すべて断られたという奇特な証言もある。たいていは最初から諦めて、身内がやっている商店などで見習いをする。「ケバブ研修」という正鵠を得た蔑称も定着している。月曜日は揚げ菓子を砂糖の中で転がす手伝いをした、火曜日はもっとたくさん転がして上達した。以下同文の日々を送り、「研修に行きました」という以外の内容はほとんどないレポートを提出することになる。
政府もこの問題について認識しており、マクロン大統領の発案で、2018年には、都市郊外の教育重点地区を対象とする研修先斡旋のプラットフォーム「Monstagedetroisieme.fr」が立ち上げられた。今年も3万件の研修先が用意されたが、どういうわけか候補者が見つからないオファーも多いという。転がし上手になる研修よりも魅力がないということなのだろうか。