ユーロ圏のインフレ率、過去最高を更新

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欧州連合(EU)の統計機関ユーロスタット(Eurostat)の8月31日の速報によると、ユーロ圏のインフレ率(前年同月比)は8月に9.1%に達して、過去最高を更新した。ユーロ圏のインフレ率は2021年11月以来、毎月過去最高を更新しており、7月には8.9%を記録していた。
2月に発生したウクライナ危機がエネルギー価格や食品価格の高騰に拍車をかけている。8月にはエネルギーが38.3%、食品・アルコール・たばこが10.6%、非エネルギー工業製品が5.0%、サービスが3.8%の上昇をそれぞれ記録した。
こうした情勢で、欧州中央銀行(ECB)が9月8日の金融政策理事会で大幅な利上げを行う可能性がいっそう強まっている。利上げは景気回復の腰を折る恐れがあるが、いわゆるタカ派の加盟国の中銀総裁や専務理事が利上げを強く主張しており、独連銀のナーゲル総裁は8月31日のユーロスタット発表後にも、インフレ高進が家計に及ぼす悪影響などを指摘しつつ、次回の理事会で大幅な利上げを決定するだけでなく、それ以降も追加利上げを行う必要があると強調した。エコノミストも、4-6月期のユーロ圏の賃金上昇率が平均で2.1%にとどまり、世帯の実質所得が圧迫されていることなどを指摘して、9月8日に50ベーシスポイント以上の利上げが行われることは確実だとみている。タカ派は75ベーシスポイントの利上げを要求しているが、急激な利上げで景気の後退が鮮明になった場合にはECBはより難しい対応を迫られるリスクもある。
また、ユーロスタットは9月1日、ユーロ圏の7月の失業率を6.6%と発表した。こちらは前月を0.1ポイント下回り、過去最低値(現行の統計が開始された1998年4月以来)を記録した。なお、ユーロスタットは当初、4月、5月および6月の失業率を6.6%と発表していたが、今回それを各月について6.7%に修正したため、7月が過去最低となった。EU全体の7月の失業率は前月をやはり0.1ポイント下回る6.0%となった。7月の失業者数はユーロ圏で1098万3000人、EU全体では1295万9000人。