アフリカ二輪車市場、バイク・タクシーがけん引

投稿日: カテゴリー: アフリカ経済・産業・社会事情

アフリカでは自動車よりも二輪車が普及しており、今後も市場の成長が続くと見られている。メーカーとしてはインド・中国勢が優勢だが、日本メーカーもアフリカ市場に合った製品の現地生産に注力している。二輪車市場の成長をけん引するバイク・タクシー業界ではスマホ・アプリによる配車サービスも始まっており、今後の展開に期待がかかる。

近年の経済成長を背景に中流階級が成長するアフリカ諸国では自動車の普及が進みつつあり、世界の自動車産業にとっては最後のフロンティアとされる。しかし、組織化された自動車市場が成立するためには1人当たりの国内総生産(GDP)が5,000ドル以上は必要であるとされ、随一の経済大国である南アフリカ共和国を除くと、アフリカ諸国の多くはこのレベルに達していない。自動車よりも普及が進み、今後の成長も期待できるのが二輪車だ。自動車市場調査を専門とするCORAMが2018年に発表した報告書によると、アフリカにある各種車両の数は9,200万台。うち自動車は3,800万台(国際自動車工業連合会によると3,000万台)で、4,000万台以上が二輪車によって占められている。域内に自動車工場のある北アフリカと南アフリカで唯一、自動車の数が二輪車の数を上回っているが、西アフリカでは自家用車880万台に対して二輪車2,260万台と二輪車が圧倒的に多い。

サブサハラ・アフリカで最大の二輪車市場を有するナイジェリアの年間登録台数は150万台程度で、近年は年間13%のペースで成長しているという。ちなみに日本の二輪車販売台数は年間約35万7000台(日本自動車工業会、2017年データ)というから、ナイジェリアでは日本の4倍の数の二輪車が売られていることになる。日本では1980年に二輪車販売台数が237万台に達したが、その大部分を占めた原付第1種(50cc以下)の販売台数はその後10分の1以下に減ってしまった。そういえば、1980年代にはバイクが町の風景に溶け込んでいたし、原付という言葉も日常的に聞かれていたが、現在ではバイクといえばツーリング用の大型バイクを思い浮かべるようになっているのだから、実感として、時代とともに二輪車市場が大きく変化したのが感じられる。単純比較はできないが、この原付が今でも元気なのがアフリカだ。

アフリカの二輪車市場では中国とインドのメーカーが優勢で、全体の80%以上を占めている。首位は100ccのBoxerが人気のインドBajajで、ナイジェリアでは市場シェアの35~40%を確保している。Jincheng、Lifan、Nanfangといった中国メーカーは2000年代より安価なモデルを大量に投入し、市場シェアを獲得していったが、品質が低いとのイメージがつきまとって最近は停滞気味。1970年代からアフリカで原付を販売する仏MBK(ヤマハ傘下)とプジョー・スクーターも現地の販売店・修理店網を生かして健在。品質の高さで定評のある日本勢も巻き返しを図っており、ヤマハとホンダは現地で組み立てを行っている。いずれのメーカーも価格面だけでなく性能面でもアフリカ市場に合った製品を展開しており、状態の悪い道路での走行に耐えられるように頑丈で、質の悪い燃料やオイルを使っても問題ないようにできているという。

サブサハラ・アフリカ最大の市場であるナイジェリアでは、ホンダが1979年以来生産・販売子会社を展開し、最近は日本円で7万円程度という安価に抑えたビジネスユースのAce110(110cc)を市場に投入して成功を収めている。また、商用車メーカーの印マヒンドラも2015年に工場を開設。1980年代に工場を開設した後、2005年に撤退していたヤマハは豊田通商傘下の仏CFAOと合弁でラゴスに生産拠点を設置した。この工場は2016年5月にオープンし、2018年以降は年間7万台の生産を目標としている。

一方、ナイジェリアに比べると市場規模は小さいものの、今後の成長が見込まれる国にケニアがある。ケニア自動車組立産業協会(MAAK)によると、同国の二輪車登録台数は2007年の1万6000台から2015年の10万台へと大きく増加し、さらなる成長が見込まれる。ホンダは2013年にナイロビに工場を設置し、日本から部品を輸入して125ccの2モデル(Ace125とXL125)を組み立てている。そして、国内市場への供給にとどまらず、2015年よりブルンジをはじめとする地域内の諸国に輸出している。ヤマハはケニアでは自前の工場を構えていないが、トヨタの工場内に2015年9月に生産ラインをオープンした。

ところで、ケニアをはじめアフリカの二輪市場の特徴として「ボダボダ(Boda boda)」や「ゼミジャン(Zemidjan)と呼ばれるバイク・タクシーの存在がある。ケニアでは2016年現在で70万台の二輪車が登録されているが、うち40万台はタクシーとして用いられているという。首都ナイロビは交通渋滞で悪評高く、バイク・タクシーは混雑する道路をぬって移動できる上、公共交通網の発達していない地域でも気軽に利用できるという利点がある。乗客だけでなく荷物も合わせて運搬できる。交通インフラの整備が進んでおらず、自動車よりもバイクの方が普及しているアフリカならではのサービスだ。バイク・タクシー需要の高まりが二輪車市場の成長を支えているといっても過言ではない。二輪車の登録台数が70万台のケニアで1日に1,500万人が二輪車を利用しているとの数字もあり、バイク・タクシーの活躍ぶりがうかがわれる。

バイク・タクシー業界ではスマホ・アプリケーションを通じた配車サービスも行われている。例えばウガンダでは、ベルギー人起業家がボダボダの運転手経験者と組んで2014年に設立した「セーフ・ボダ」がパイオニア的存在で、料金はちまたのバイク・タクシーよりも50%程度高いが、運転手は全員トレーニングを受けており、安全走行が売り物。乗客にとっては運転手と面倒な価格交渉をせずに済むという利点もある。2018年3月には配車サービス大手のタクシファイ(2019年3月にボルトに改称)とウーバーも参入した。ボルトは世界31カ国で配車サービス、バイク・タクシー、キックスケーターのシェアリングサービスを行っており、アフリカではガーナ、ケニア、ナイジェリア、南アフリカ共和国、タンザニア、ウガンダで事業を展開している。バイク・タクシーをアフリカ事業の中核に据え、それ以外の輸送手段と合わせて、向こう5年間で数百万ドルを投資する計画だ。

Research & Marketsの市場調査によると、アフリカの二輪市場は今後も拡大を続け、2021年には90億ドル規模に成長する見通しだという。現在は中国・インドからの輸入バイクが市場を席巻し、日本などのメーカーが現地で組み立てる二輪車も部品は輸入されているが、将来的には現地調達が進み、さらには、アフリカ産のバイク・タクシーが客を乗せて疾走する日が来るかもしれない。

(初出:MUFG BizBuddy 2019年7月)