フランス防衛産業、2013年の輸出が回復

投稿日: カテゴリー: フランス産業

防衛産業はフランス経済にとって極めて重要な産業である。2012年、フランスの武器輸出総額は縮小したものの、2013年は2億ユーロ以上の大型契約が増えたことから、フランスの武器輸出総額は米国、ロシア、英国に次ぐ世界第4位となった。2014年も好調な見通しである。

フランスの競争力の低下が指摘されて久しいが、防衛産業はこの限りでない。防衛産業は、その多様性、雇用規模、先端技術における研究・イノベーションなどの側面から見て、フランス経済にとって極めて重要な産業である。

1950年代の終わりからフランスは、戦略的、技術的に自立を目指し、核、飛行機、ミサイルを中心とした防衛産業政策を打ち出している。フランス政府の大規模な投資により、防衛産業は大きく成長し、欧州では英国に次ぐ軍需大国にのし上がった。米国軍事専門誌「ディフェンスニュース」の世界軍事企業売り上げランキング(2013年発表)では、フランス企業として、11位にタレス社、22位にDCNS社、25位にサフラン社、55位にダッソー社がランクインしている。こういった十数の大手企業と4,000余りの中小企業からなる防衛産業部門は16万5000人を擁する。2012年の売り上げは150億ユーロで、その約3分の1を輸出が占めている。

防衛産業を取り仕切っているのは国防省の装備総局(Direction Générale de l’Armement:DGA)である。1961年にその前身となる軍需省庁委員会(Délégation Ministérielle pour l’Armement:DMA)が設立され、1977年に改組されて現在に至る。
DGAは、フランス軍向けの防衛装備の実用化のための試験、評価、調達の実施、将来に向けての準備、武器輸出の推進などを行っている。DGAは輸出を支援するため、契約に基づき諸外国に納品する防衛装備が、フランス軍に引き渡された製品と同様のレベルであることを保証しており、2013年は34の国や国際組織などのために製品評価を行った。

フランスの中小企業による輸出額は輸出全体の5%にすぎないが、これらの企業がイノベーションやノウハウの維持に非常に重要な役割を担っている。このためDGAは、中小企業を対象に、持続可能なイノベーション支援(RAPID)プロジェクトの枠組みで、2013年は64件のプロジェクト支援を実施した。同年には、国防省の下に防衛装備の輸出促進を目指し防衛輸出委員会(Comité Ministériel des Exportations de Défense:COMED)が設置され、防衛装備輸出のために企業との協力がさらに強化された。

国防省の予算は2014-2025年の期間で3,640億ユーロ、このうち2014-2019年の期間には1,792億ユーロが計上されている。一方、2019年までに兵力を現在より10%削減し、2015年までに1万人、それ以降2019年までに2万4000人のポストを削減する。兵力の削減に伴い、フランスは、ドローン(無人航空機)などを活用して装備の近代化を進める見通しである。

コンサルティング会社IHSが2013年6月に発表した調査結果によると、2008年から2012年の間に世界の武器輸出総額は585億ユーロから774億ユーロに拡大しており、2018年には1,000億ユーロを超える見通しで、フランスのシェアは拡大すると予想されている。2008年から2012年の期間中、フランスの輸出額は12.9%拡大した。

2012年の数字のみを見ると、フランスの武器輸出総額は、2億ユーロ以上の大型契約が3件と少なかったこと、国際競争の激化などにより、前年比26%減の45億6000万ドル(48億ユーロ)に縮小した。これにより、フランスは世界第4位の座をイスラエルに譲り、第5位に後退した。トップは米国(300億3160万ユーロ)で、ロシア、英国がこれに続く。フランスの主な輸出先は、アジア・太平洋諸国で全体の52%を占める。このうちインドの発注額は12億ユーロに上り、サウジアラビア(6億3610万ユーロ)、マレーシア(4億6100万ユーロ)、米国(2億840万ユーロ)、ロシア(1億8540万ユーロ)を抑え、フランスにとって最大の輸出相手国となった。シンガポール、モロッコがこれらに続く。ちなみに世界レベルで見ると、武器の最大の輸入国はサウジアラビアでインド、アラブ首長国連邦がこれに続く。

一方、2013年のフランス武器輸出総額は前年比31%増の63億ユーロに拡大した。世界第3位の輸出国になるという目標は達成できなかったが、イスラエルを退け第4位となった。2013年は全てのセグメントで回復が見られた。2億ユーロ以上の大型契約は、2012年の3件から8件へと増加した。この中には、アラブ首長国連邦へのスパイ衛星輸出契約(8億ユーロ)、サウジアラビアのフリゲート艦の刷新契約(5億ユーロ)、ブラジルへの軍事用通信衛星販売契約(3億ユーロ)、ペルーおよびウズベキスタンへのヘリコプターの引き渡しなどが含まれる。

一方、2億ユーロ未満の基礎的な契約(例:ミサイル、レーダー、防衛用電子装備など)は前年比7%増加した。ミサイル・メーカーのMBDA社および防衛電子製品メーカーのタレス社はそれぞれ15億ユーロの売り上げを記録し、フランス防衛産業企業の売り上げでトップとなった。売り上げ増加のみならず、2013年はフランスにとって歴史的に重要な市場である中東、特にサウジアラビアとアラブ首長国連邦との貿易が回復したことも注目に値する。これにより、全輸出に占める中東地域の割合が40%となり、再びフランスの武器輸出先として最大の市場となった。以下、東南アジア16%、北アフリカ11%、南米9%の順。フランス防衛産業は防衛装備の全てのセグメントをカバーするが、最も需要が多いのはミサイル部門。2013年は非常に好調で、輸出額は2012年に比べ4倍に跳ね上がり、全体の8分の1を占めている。

2014年の輸出も、総選挙が行われるために交渉が中断しているインドとダッソー社のラファール戦闘機126機の契約(120億ユーロ)が成立すれば好調な見通し。また、10億ユーロを上回るとされる、タレス社のサウジアラビアへの対空防衛システム販売契約の行方にも注目が集まっている。

(初出:MUFG BizBuddy 2014年4月)