イベリア半島で大停電が発生

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イベリア半島で4月28日12時半(現地時間)に大停電が発生した。スペイン及びポルトガルにおいて鉄道や地下鉄が完全にストップ。交通信号もほとんどが機能せず、バルセロナなどの大都市では大渋滞が発生。航空交通網でも乱れが発生した。通信網も機能せず、店舗におけるカードや非接触型の支払いが不可能となり、携帯電話のネットワークを求める人が町にあふれだすなど大きな混乱が起きた。スペインでは、4カ所の原子力発電所もすべて自動的に運転を停止し、非常用ディーゼル電源の稼働を開始した。フランス南西部バスク地方においても一時停電が発生したが、短時間で復旧した。仏RTE(送電)は、停電の拡大を防ぐために、12時38分にイベリア半島とフランスを接続する国際連系線を遮断したが、13時半に接続を回復した。その後RTEは、スペインに700MW規模の送電支援を実施。イベリア半島側の送電網の準備ができ次第、支援規模を950MWに引き上げることが可能だと説明した。28日夜時点では、支援規模は2000MWに引き上げられた。モロッコにおいては、インターネット回線や空港での発券・搭乗システムに乱れが出た。カナリア諸島、バレアレス諸島では停電は発生していない。
スペインのREE(送電)は、13時時点で、「復旧までに、うまくいって6-10時間ほどかかる」との予測を発表。REEによると17時時点では、スペインの北部、南部、西部の一部で電力が復旧。20時過ぎの時点では国内電力網の20%が復旧した。21時半の時点では復旧の割合は35%、23時の時点では約50%、29日朝5時時点では92%に伸びた。ポルトガルのREN(送電)は、21時時点で、ユーザー650万のうち75万で電力を回復したと説明。夜の間に国内全体で電力が回復できる可能性があると予告した。夜中時点では、620万のユーザーの電力が回復された。
なお29日午前8時までのREE発表によると、スペインの電力網は99%復旧した。また29日午前9時までのRENの発表によると、ポルトガルの電力網も「完全に安定した」という。マドリードの地下鉄は29日朝8時に運行を再開。スペイン国内の空港管制塔も朝7時には100%能力を回復した。
28日夜時点で原因は判明していない。ポルトガルRENは、スペイン中央部において、珍しい気象現象が発生したことが原因との見方を示した。気温が極端に変化して、400KVの高圧送電線に異常な振動を引き起こし、この振動が電力網の同期化の問題を引き起こしたという(29日続報:これについては、偽のコミュニケを元にした情報であることが判明した)。欧州委員会の中では、再生可能エネルギーの発展を背景に、電力需給関係のバランスが急に崩れ、電力網の「ショート」が起きた可能性を指摘する声が上がっている模様。サイバー攻撃の可能性を指摘する見方もあるものの、欧州委はこれを否定している。
スペインのサンチェス首相は、28日15時から国家安全保障に関する特別会議を招集した。首相は同日夜、わずか5秒ほどでスペインの電力網から電力需要の6割に相当する15GWもの電力が失われてしまったと説明。その原因についてあらゆる可能性を探っているが、まだ確定できていないとしつつ、国民に責任をもった行動を呼びかけた。
欧州で大規模な停電が発生した例としては、2003年9月28日にサルデーニャ島を除くイタリア全土で停電が起こった例、また2006年11月4日にドイツの電力網における欠陥が隣国に拡がり、一時間ほどフランス、ベルギー、オランダ、イタリア、スペインにおいて停電を発生させた例がある。