スペイン政府、労働時間短縮を計画:反発も

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スペイン政府は労働時間の短縮と就労時間帯の見直しを計画している。感情的な反発も生じている。
左翼政党Sumarに所属するディアス労相は、週労働時間数を現行の40時間から2025年に37.5時間へ引き下げることを目指している。賃金水準を維持しつつ労働時間の短縮を実現する計画。公務員部門で導入済みの労働時間と横並びになる。労相はさらに2032年までに週32時間労働制への移行の実現を目指しているが、労働時間の短縮には消極論もあり、サンチェス左派政権に協力する地方主義諸政党の賛成を確保することが鍵になる。
ディアス労相は、就労時間帯の見直しにも意欲を示しているが、こちらはさらに反対論が根強い。労相は、「20時に会議を開くとか、飲食店が午前1時まで開いているのはまともではない」と言明、就労者の生活水準の向上という観点から就労時間帯の規制を目指している。ただ、スペインでは、他の近隣諸国と比べて就労時間帯が大きくずれており、習慣上の理由からそれに愛着を示す人も多い。スペインでは、フランスを含むより東側に位置する諸国と同じ子午線を採用している関係から日没の時間が遅く、それもあってか就業時間が遅くに偏る傾向がある。昼休みは14時から16時で、19時以降も勤務を続ける人が全体の30%近く、21時以降も10%近くと多い。それにあわせる形で飲食店も遅くまで営業しており、欧州の近隣諸国とは状況が大きく異なる。これをナイトライフの充実であり国の誇りとみなす向きもあり、就労時間の規制には抵抗も多い。宿泊・飲食業界団体は事業機会を失うことを恐れて規制に反対しており、保守勢力や極右勢力もディアス労相の姿勢を厳しく批判している。