EYが毎年公表するフランスの投資誘致力に関する調査結果によると、フランスは6年連続で投資案件数で欧州首位となった。ただし、欧州経済の弱体化を反映して、案件数は1025件と前年比で14%減少した。2位は英国で853件(同13%減)、3位はドイツで607件(17%減)だった。
2024年の解散総選挙後の政局混迷の中で、投資案件は大幅減になることが懸念されたが、当初の懸念と比べると健闘を見せた。フランスの場合、地理的な位置、低炭素エネルギー、量子コンピューティングやAIや防衛など有望分野の将来性などが投資家に評価されている。その一方で、分野別では、化学や自動車などの不振を背景に、製造業では22%の減少を記録したのが目立った。研究開発部門への投資が15%減を記録したのも懸念される。また、本社機能と金融関連の誘致では、英国に大きく水をあけられている。
雇用創出数に関しては、首位の英国が3万8196人、2位のスペインが3万4603人、フランスは2万9000人で3位だった。フランスの弱点は高額な人件費と労務規制の厳しさにある。レックスコードの推計によると、民間部門の1時間あたりの人件費は44.11ユーロで、ドイツ(43.97ユーロ)を上回り、スペイン(25.79ユーロ)やポーランド(16.70ユーロ)との差が歴然としている。ちなみに、2023年と比較した2024年の誘致案件数は、スペインで15%、ポーランドで13%増加した。
フランスの景気停滞と消費減退も不安材料となる。今後の投資誘致のためには、企業の負担を軽減する税制改革と法制簡素化が望まれる。