フランスを代表するブルーチーズ、ロックフォールは、AOP(地理的表示保護制度)認定100周年を迎えた。AOP自体は1990年代に欧州連合(EU)が導入した制度だが、その前身となったフランスの原産地呼称法が1925年7月26日に仏議会の決定によりロックフォールに適用されていた。
ロックフォールの生産者は現在7社、1500戸の農家から羊乳を集めてつくったチーズを、5万平米の洞窟で熟成させる。2023年には1万4436トンを出荷した。その28%が仏国外向けで、スペイン、ドイツ、ベルギー、英国に次いで、米国が第5位の輸出先だ。
ロックフォール生産者は一様に、トランプ米政権の関税政策を危惧している。米国は1999-2009年、欧州連合(EU)のホルモン剤使用牛肉の禁輸措置に対抗して、ロックフォールを含む欧州産品に100%の関税を適用した。2011年の米国での販売量は1999年と比較して37%減少し、困難な時期だったという。今日でも米国のロックフォール消費量は1999年の水準に戻っていない。輸出先として新規市場(ブラジル、メキシコ、日本、オーストラリア)の開拓も進めているが、米国への輸出には1860年代以来の歴史があり、重要な市場であることに変わりはない。
本国フランスでは2022年以降、ロックフォールの消費量が年に3-4%減少している。家庭でもレストランでも、昼食や夕食にチーズを食する習慣は影を潜めた。
そこで業界では、チーズを振る舞う別の機会を提案し、新たな消費者の獲得に努めている。人気のパスタやハンバーガーにロックフォールを取り入れたり、スナックとして間食用にしたり。シェフやインフルエンサーの力も借りて、100周年記念をてこに、ロックフォールの躍進を目指している。