ブルターニュ地方の缶詰産業が悩むイワシの小型化

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仏ブルターニュ地方のイワシ缶詰業界が、イワシの不漁と小型化(体重減少)に悩んでいる。原料を鮮魚に限定している著名ブランド「ラ・ベル・イロワーズ(La Belle-Iloise)」は2024年に十分な生産量を達成できず、一部の製品に関して今夏7月半ばまで品切れに陥る可能性を懸念している。ブルターニュ沖での極度の不漁もさることながら、イワシの小型化が悩みのタネで、製造に要する手間が増え、生産性の低下を招いているという。Connetableブランドの魚缶詰を製造する「シャンスレル(Chancerelle)」でも、小型化したイワシを手作業で処理するには2倍の労働力が必要になると強調している。
仏国立海洋開発研究所(IFREMER)によると、イワシの体重は過去15年間に半減した。イワシの不漁と小型化はすでに地中海でも2000-10年に観察されており、イワシの餌となる動物性プランクトンに温暖化が及ぼした影響が理由と推測されている。海水温が上昇し、溶存酸素量が減少している中で、小型の動物性プランクトンの割合が増え、良質な大型の動物性プランクトンの割合が減っており、イワシが食餌行動に費やすエネルギー量が増えている模様。IFREMERによると、生態系の温度が上昇すると動物が小型化するという一般的な現象があり、今後もこの傾向は続く見込みという。
フランス沖でのイワシ漁が不調なため、缶詰メーカーはポルトガルやスペインでイワシを調達し、さらに、モロッコから冷凍魚を輸入するなどの対策を講じているが、高級品はブルターニュ沖で捕れる鮮魚を原料とするため、危機感は強い。
イワシ缶詰は健康に良いと言われ、フランスでは人気の高い食品で、台所に買い置きがある家庭が多い。年間販売量は1万6000トン程度に達する。平均価格は1キログラムあたり11ユーロ。