映画界の性的暴行疑惑事件で、パリ地裁は3日、映画監督のクリストフ・ルッジア被告人(60)に対して、禁固4年(うち2年は執行猶予付き)の有罪判決を言い渡した。被告人は弁護士を通じて、判決を不服として告訴すると予告した。
この事件は、未成年の時に性的被害を受けたと女優のアデル・エネルさん(35)が告発したことをきっかけに浮上した。エネルさんは2019年11月にこの件をメディアを通じて公表。当初は告訴しないとしていたが、警察は捜査を開始し、エネルさんも告訴に踏み切った。2001年に撮影の映画「Les Diables(悪魔たち)」(2002年公開)に、当時12歳だったエネルさんは出演したが、監督は撮影後にエネルさんを定期的に自宅に招き、その際に性的な接触などがなされたという。裁判所は、監督から話を聞いた人々の証言を根拠に、監督が未成年者だったエネルさんに対する影響力を悪用して性的な行動に及んだと認定し、有罪判決を下した。裁判所は、刑の執行に関して、発信機装着を条件に、刑事施設ではなく自宅で刑期を務めることを認める一方で、エネルさんに対する5万ユーロの賠償金の支払いを命令し、5年間にわたり未成年者と接する職業を営むことを禁止した。求刑は禁固5年(うち執行猶予付き2年)だったが、それよりは軽い量刑となった。
被告人の弁護士は判決後、「声が大きい者が、世論の無条件の支援を受けた者が勝った」、「『疑わしきは罰せず』という基本的原則が踏みにじられた」などと述べて、控訴を予告した。この事件は、フランス映画界における性的暴行問題を告発する動きの端緒の一つとなり、広く注目されていた。