フランス語に「tout ça pour ça」という表現がある。「あれだけやってこれっぽっちか」というような意味合いで、映画
のタイトルになったこともある(クロード・ルルーシュ監督のコメディだったと思うが筆者はみておらず、タイトルだ
けが妙に印象に残っている)。今夏の解散総選挙から、フランスとしては異例の長期にわたる内閣不在を経て、バルニ
エ内閣が成立したが、その顔ぶれを見れば、大統領派の閣僚がかなり残留している。この間の政治危機をハラハラしつ
つ追っていた身としては、肩透かしを食った感が強い。筆者は別に左派や極右の内閣の発足を望んでいたわけではない
ので、中道右派系の内閣に落ち着いたことに特に不満はないが、まるで解散総選挙がなかったかのようなこの現状維持
ぶりにはいささか違和感を覚えずにはいられない。いやいや、これこそが極端な主義主張を標榜したがる左派や右派に
は期待できない穏健派の持続可能性というやつさ、というような意見もあるかもしれないが、いかにも退屈な、終わり
なき凡庸さの持続に人はどこまで耐えられるものだろうか?