人類進化とノーベル生理学・医学賞

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

最近の欧州はハッピーなニュースに乏しいが、今年のノーベル生理学・医学賞受賞者にスウェーデンのスバンテ・ペーボ博士が選ばれたのは朗報だ。人類の進化に関する近年の研究では、とくにネアンデルタール人やデニソワ人の遺伝子研究で驚異的な進展があったが、これをリードしてきたのが、ペーボ博士が率いるドイツのマックスプランク研究所の研究チームだった。筆者のような門外漢にとっても、いつの間にか、新聞・雑誌やテレビで頻繁に目にする博士の名前と飄々とした風貌が親しいものとなっていた。毎回わくわくするような研究成果を発表してきた博士だが、正直なところ、ノーベル生理学・医学賞の対象となるとは予想していなかった。たしかに、ネアンデルタール人やデニソワ人から引き継いだ遺伝子が現生人類の健康に及ぼす影響についても興味深い研究を行っているが、人類進化に関する研究が受賞することは稀だろう(初めてかも知れない)。選考委員会もなかなか思い切った決定をしたものだと素直に評価したい。率直に言って、平和賞や文学賞の場合には、選択基準が恣意的な印象を受けることが多いが(こいつらのどこが平和に貢献したっちゅーんや、とツッコミを入れたくなることも多く、今年の平和賞がロシアのプーチン大統領でも決して驚きはしないし、文学賞はフランス人のジャン・クロード・アルノーという詐欺師が長年にわたり影で糸を引いていたことが判明しているので、いまや信用は地に落ちたが、それでも村上春樹が受賞したら、ちょっと嬉しいかも)、誰もが納得できる実績のある科学研究者の受賞は毎年人類の未来に多少の希望をもたらしてくれる嬉しいイベントである。