ヒジャブ絡みの事案で高校校長が退任、物議に

投稿日: カテゴリー: 日刊メディアダイジェスト欧州レポート

パリ20区にあるモーリス・ラベル高校の校長が3月22日に退職した。校長は生徒や父兄、教職員らに宛てた書簡の中で、安全上の理由から早期退職することを決めたと説明した。校長は去る2月に、学内でヒジャブ(イスラム教徒の女性が着用するベール)をつけていた女子生徒に注意したことがきっかけで、インターネット上で殺人脅迫の対象となっており、これを苦にして退職を決めたものとみられる。この事件は政界でも物議を醸している。
校長は去る2月に、同高校に通うBTS(高校卒業後に高校にて継続して取得できる職業資格)の女子生徒が構内でヒジャブを着用しているのを見つけて、着用をやめるよう注意した。フランスでは、政教分離の建前から、学校において宗教的シンボルを着用することが法律により禁止されている。女子生徒はこれを無視し、校長との間でやり取りがあり、警察の介入に至った。女子生徒側は、校長に暴力を振るわれたと主張して提訴したが、この提訴は検察当局により却下された。女子生徒は自主退学したが、その後、インターネット上でこの事件を取り上げて校長を非難する動きが生じ、殺人の脅しをする書き込みも現れた。校長は恐喝などの疑いで提訴し、この件では2人の容疑者が逮捕されている。アタル首相は27日のテレビインタビューの機会に、校長に対する支持の念を表明。事件の発端になった女子生徒について、虚偽告発の疑いで提訴すると予告した。
この件は現場の教職員の間で反響を呼んでいる。教職員らによると、宗教絡みを含めて、生徒や父兄などが攻撃的な反応を示すケースが増えているといい、最前線に立たされる教員らに対して、国と上層部が十分な支援を与えていないとする不満の声も根強くあり、教職員らは退職の校長に自身の困難を重ね合わせてみている。政界では、左派勢力が教員らの声を汲み取る形で政府の対応が不十分だと糾弾。保守陣営と極右陣営は、政府の弱腰の対応がイスラム主義の台頭を招いているなどと非難している。