仏政府、温室効果ガス削減の新方針を公表

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ボルヌ首相は22日、温室効果ガス削減の新方針を公表した。目標をかさ上げし、実現に向けた方向性を示した。
仏政府はこれまで、1990年比で2030年までに温室効果ガスの排出量を40%削減するとの目標を設定してきたが、これを、欧州連合(EU)の方針にあわせて55%削減にまでかさ上げした。総量では、二酸化炭素換算で2022年の4億800万トンに対して、2億7000万トンまで削減する。部門別では、建物で6400万トンから3000万トンへ、輸送で1億2900万トンから9200万トンへ、工業部門で7200万トンから4500万トンへ、農業で8100万トンから6800万トンへ、エネルギーで4700万トンから2700万トンへ、それぞれ削減する。
首相府では、削減努力の半分は企業に、4分の1は家計に、4分の1は公共部門・自治体がそれぞれ引き受けることになると説明している。ボルヌ首相は、「小さな者には小さな努力を、大きな者には大きな努力を」求めると説明した。試算によると、住宅や公共施設のリフォーム、クリーンカーへのシフト、脱炭素のための工業部門の投資など、様々な取り組みの費用は、2030年時点で年間660億ユーロに上り、うち340億ユーロは国庫が負担する見通しとなっている。財源としては、公的債務の増大のほかに、気候変動対策に逆行する各種税制優遇措置の見直しで年間100億ユーロの確保が可能とみられている。また、政府に提出の報告書は、家計の金融資産を対象にした特別課税を通じて、上位10%の最富裕層を対象にした特別課税を期間限定で行うことも提案している。
政府が今回示したのは、主に様々な取り組みによる削減の目安であり、強制力の伴う内容ではない。政府は具体的に、EVへのシフトで11%削減、リモート就労の振興で3%削減などの目安を示したが、その実現のための措置については明示しておらず、環境保護団体などからは、あいまいな内容だとする批判の声も上がっている。