マヨット海外県で開始の不法移民摘発作戦に暗雲

投稿日: カテゴリー: 日刊メディアダイジェスト

ダルマナン仏内相は21日、コモロ諸島に属するマヨット海外県で、24日に始まる週から、大規模な不法移民の摘発とスラム街の撤去を実施すると発表した。この作戦は「Wuambushu」と命名され、発表を受けて現地は不安と期待に包まれた。摘発と撤去に向けて治安部隊は1800人への増員がなされ、マヨット第一の都市マムズの郊外では23日の夜から治安部隊と若者グループの衝突が発生した。24日には摘発された不法移民を乗せた船がコモロ連合のアンジュアン島へと出航したが、フランス政府の独断的な作戦に不快感を示したコモロ連合は船の接岸を許さず、26日まで同島への人の往来を停止すると発表した。
スラム街の撤去は本島(グランド・テール)の北部にある「Talus 2」にて25日から開始される予定であったが、マルズの裁判所は24日、「Talus 2」に居住する約20人からの提訴を受け、急速審理にて、同地区での摘発や住宅撤去は住民の安全を危険にさらす行為であるとの判断を下した。裁判所は、マヨット県知事(官選)に「Talus 2」におけるあらゆる摘発・撤去作業を停止するよう命じ、作戦の実行は急遽延期された。県知事は直ちに控訴の手続きを開始した。
マイヨット海外県はフランスでもパリ首都圏(イルドフランス地域圏)に続く人口密集地域であるが、6万軒強の住宅の40%はトタン外装の粗末なもので、飲料水や電力の供給がないところも多い。ダルマナン内相は、こういった脆弱な住宅1000軒を2ヵ月以内に撤去すると言明していた。またスラム街の住民の多くはコモロ連合からの不法移民で、こうした不法移民はマヨット海外県の人口の30%を占めている。マヨット島は、フランスからの独立の是非が問われた1970年代に、旧仏植民地のコモロ諸島の中で唯一、フランスの海外県として残ることを選んだ。今日、独立を選んだコモロ連合からの移民は、マヨット海外県の発展と治安維持の障害になっているとの見方が同県の住民の間で一定のコンセンサスを得ており、地元の政治家の多くは「Wuambushu」を支持している。
ちなみに、内相の派手な発表により注目を浴びた「Wuambushu」であるが、実際には同様の措置は過去にも実施されており、2022年には住宅500軒が撤去され、2万5380人の不法移民が本国に送還された。2021年にも1600軒が撤去、2万4000人が送還されている。