難民救助船への対応を巡り、フランスとイタリアの間の関係が険悪化している。フランス政府はイタリア政府に対する制裁措置を予告した。
イタリアでは、極右勢力を主軸とするメローニ内閣が先頃発足。メローニ内閣は、シチリア島沖に待機する難民救助船の上陸を渋る対応を続けていた。このため、待機していた救助船オーシャン・バイキング(NGOのSOSメディテラネが運営)は、230人の難民を乗せてフランスに向かい、11日朝にトゥーロン港に上陸を認められた。3週間にわたる待機を経て、一応の解決を見た。
イタリア政府は、イタリアの通信社が8日の時点で配信した報道のみを根拠に、フランスが難民船を受け入れることになったと発表し、これをイタリア政府の勝利であるかのように喧伝していた。これがフランス政府の逆鱗に触れ、フランスのダルマナン内相は10日の時点で、難民受け入れに関する欧州連合(EU)の申し合わせをイタリアが守っていないと非難し、南欧諸国に漂着の難民の受け入れ分担に関する合意(2022年夏季より2023年夏季までにイタリアに漂着した難民のうち3500人をフランスが受け入れると約束)の実施を凍結すると予告。さらに、仏伊国境の警備を厳格化し、イタリアからの流入難民の押し戻しを徹底するとも予告した。
仏政府が決めた難民救助船の受け入れには、国内の右派や極右勢力からの風当たりも強く、政府として微妙な問題をはらんでいる。それが、イタリア政府の「勝利宣言」に対する強い不快感の背景にある。フランス政府は、人道的な配慮のみによる決定であることを強調。イタリアのメローニ内閣が人道的な見地からの取り決めを守っていないと非難している。