ノルウェー政府、EUのガス価格上限設定計画に難色

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欧州連合(EU)はエネルギー価格高騰対策の一環として、域外から輸入する天然ガスの価格に上限を設定することを計画しているが、ロシアにかわってEUへの主要なガス供給国となったノルウェーはこの計画に難色を示している。同国のストーレ首相は9月12日、欧州委員会のフォンデアライエン委員長との電話会談後に発表した声明で、EUとより密接な協議を進め、様々な提案に対して開かれた姿勢で臨むとしつつも、ガス価格上限設定には「懐疑的」だとの見解を表明した。
EUでは、欧州委員会がロシア産ガスを対象とする価格上限設定を提案したのに対して、イタリアなど複数の加盟国が、ノルウェー産やアルジェリア産なども含めて域外から輸入するガスのすべてを対象とする価格上限設定を要求している。欧州委員会は、価格上限を設定した場合、特にLNGの確保が難しくなることなどを指摘しているが、数日以内に、加盟国の支持を得られる緊急対策案をまとめる必要がある。
ストーレ首相は、価格の変化には需給調整機能があること、ノルウェーとの間で価格を固定した長期購入契約よりも価格変動契約を結ぶことを強く望んだのはそもそもEUのエネルギー事業者の側であること、根本的な問題は欧州でガスが不足していることであって、価格上限は解決にはならないこと、などを指摘した。ノルウェーのアースランド石油・エネルギー相も、現状で同国がもたらすことができる最大の貢献は、将来的にガス生産量を高水準に維持することだと強調している。
ガスの価格高騰と増産により、ノルウェーのガス関連収入は2022年に1兆5000億クローネ(1500億ユーロ)、2023年には1兆9000億クローネに達して、過去最高記録である2021年の8300億クローネを大きく上回ると予測されている。ただし、ウクライナでの戦争に便乗して経済利益を得ているという悪いイメージが強まることに懸念も生じている。