ポンピドー・センターでジェラール・ガルーストの特別展

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パリのポンピドー・センターで、ジェラール・ガルーストの大規模な特別展が始まった。絵画作品を中心に、インスタレーションや彫刻を含めて140点近くが展示される。1月2日まで開催。
ガルーストは1946年生まれの76才。現代フランスの具象絵画の分野で第一人者として知られる。その作品には、古典絵画の引用がちりばめられており、ギリシャ神話やキリスト教、さらにユダヤ教の伝統的な画題に依拠しながら、意外な組み合わせを通じて極めて複雑かつ難解な構成を展開する点に特徴がある。それぞれの細部は、圧倒的な力量を感じさせてリアルだが、視野を広げて追ってゆくとリアルかつ異様な世界観が展開される。ガルーストが得意とする捻じれた人物像はその好例だろう。
ガルーストの父親は、ナチスドイツと協力したビシー政権の威光を借りて、ユダヤ人の資産を没収した過去がある。ガルーストは父親から虐待を受け、その後、精神疾患で入院する原因ともなった。それと関係があるのか、後年はヘブライ語を学んでユダヤ経典に親しみ、2014年にユダヤ教に改宗した。特別展は時代順の展示を採用しており、ギリシャ神話を出発点としてガルーストの引用先が様々に広がり、変容してゆく様子を追うこともできる。