セーヌ川を遡っていたシロイルカの救出作戦が、8月9日夜から10日未明まで実施された。捕獲には成功したが、健康状態は極めて悪化しており、受け入れ先の施設に向かう途中で安楽死が実施された。
シロイルカは、1週間ほど前から1頭だけでセーヌ川を遡りはじめ、数日前から、河口より160km程度に位置するウール県内のノートルダムドラガレンヌ水門の付近にとどまっていた。救出作戦はウール県の手配で行われ、24人の潜水夫らが参加した。水中に網を広げて、800kgにも上るシロイルカを包み、クレーンで引き上げてひとまず平底船に移した。ここで応急の手当を行ったが、シロイルカは数日間にわたり摂食していなかった模様で、体重を失い衰弱が進んでいた。それでも、専用車両に乗せて、カルバドス県ウイストレアム港の受け入れ施設に移送する作業を開始したが、苦痛が大きいと判断され、移送の途中で安楽死の対象となった。当初の計画では、受け入れ施設で体力の回復を待ち、海に帰すことが予定されていた。
シロイルカの本来の生活環境と比べて、セーヌ川の水温は高く、また淡水であることから、健康状態の悪化が懸念されていた。セーヌ川では、去る5月にもシャチが1頭のみで遡行する珍事があり、この時には1週間余りの滞留で死亡、本格的な救出作戦は実行されなかった。今回はその教訓もあって救出作戦が行われたが、成果は挙げられなかった。当局は解剖を行って死亡原因などを調べる予定。