「衛生パス」反対デモ、反ユダヤのプラカード女性が逮捕

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「衛生パス」反対デモの際に、ユダヤ人排斥的なプラカードが掲げられ、インターネット上などで騒ぎになる事件があった。警察は8日にこのプラカードを掲げていた女性を逮捕した。
問題のプラカードは7日にメッス市(モーゼル県)で行われたデモの際に掲げられた。「だけど誰だ」と赤字で書かれ、下に「裏切者」とあり、周囲に複数の人名がある。マクロン大統領の名前と並んで、憲法評議会のファビウス議長、エコノミストのジャック・アタリ氏、ニュース専門局BFM TV親会社のアルティスのオーナーであるドライ氏など、ユダヤ系の名前が連なっており、新型コロナウイルス危機の背後にユダヤ人が暗躍しているとする陰謀論をむき出しにした内容だった。
逮捕されたのは、カサンドル・フリスト容疑者(33)で、極右政党「国民戦線」(現RN)にかつて所属し、アリオ副党首の官房スタッフなどを務めたが、仲たがいをして離党し、現在は国民戦線の分派が作った「フランス党」に所属している。2011年には「ミス・モーゼル」大会にも出場したという経歴の持ち主で、ドイツ語の教員を務めている。教育省はフリスト容疑者について、懲戒処分を決めるまでの間、停職処分にしたと発表した。
この「だけど誰だ(Mai qui?)」というスローガンは、このところ極右系の陰謀論者の間で流行している。極右系の退役軍人らが中心となり起草したクーデターの呼びかけともとれる文章が右翼誌バルールアクチュエル上に掲載された件に絡んで、起草者の一人であるドラバルド氏が去る6月にテレビ出演した際に「メディア界を牛耳っている」勢力があるなどと言明、その場にいた者から「だけどそれは誰だ」と詰め寄られ、「あなた方もよく知っているコミュニティ」だと答えたという場面があり、極右系の陰謀論者は、もとは詰問の言葉だった「それは誰だ」を、ユダヤ人排斥の合言葉として用いている。