中国・台山原子力発電所のEPR(第3世代加圧水型炉)で「漏洩」発生か

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米テレビ局CNNは14日、中国の台山原子力発電所のEPR(第3世代加圧水型炉)1号機が「漏洩」を起こしたと報じた。EPRを設計した仏フラマトム(旧アレバNP)の米国子会社が米国政府に通知したという。
フラマトムの親会社であるEDF(仏電力)はこれについて、一次冷却系内の希ガスの濃度が上昇したと説明している。CNNが報じた米政府文書によると、フラマトムの米子会社は10日の時点で、「差し迫った放射線上の脅威」があると米国政府に通知。中国当局は発電所外部における放射線上限基準を緩めて、運転を継続しているという。CNNによれば、バイデン米政権は台山発電所が職員と住民にとって「危機的レベル」には達していないとみているが、国家安全保障会議のハイレベルの会合が数度に渡り開かれ、中国とフランスの当局との意見交換も行われたという。
この報道を受けて、フラマトムは14日の時点で、「入手可能な情報に基づく限り、問題の原子炉は、機能と安全性の許可された領域内に留まっており」、「発電所の機能上のパラメータの一つの推移の分析を支援」していると説明。「必要があれば解決法を提案する」とも付け加えた。また報道によると、希ガス濃度の上昇はウランペレットを収めた燃料棒の被覆管の劣化に起因すると見られる。燃料棒はフラマトムが仏ロマンシュルイゼール拠点(ドローム県)において製造したものだが、劣化の原因は不明。また劣化の問題そのものについては、2020年10月時点の測定ですでに判明しており、EDFも通知を受けていた模様。
今回の報道が米国政府のリークに由来しているのは間違いないが、米中の関係が緊張化する中での報道であるだけに、政治的な背景があるとも考えられる。インシデントがあったのか、あったとすればどの程度の規模であるのかは、中国側が情報開示に消極的であることから明らかになっていない。中国の原子力安全基準そのものが不明瞭であるという事情も加わる。いずれにしても、仏国内のプロジェクトを含めて、中国以外のEPRの完成が遅れる中での事件であり、EPRの安全性の問題が再び議論の対象になるのは避けられない。