欧州では10月最後の週末にようやく夏時間が終わり、冬時間に移行した。毎年のことだが、移行のたびに体が楽になる
のを感じる。筆者が夜型のせいもあろうが、1時間起床を遅らせることで生活のリズムや体調が大きく改善される。睡眠
と覚醒のリズムを司るサーカディアンリズムは遺伝的に決定されている部分が大きいことは最近の研究で証明されてお
り、職業上の理由などで早起きの必要があれば一時的に対応することは可能でも、意志の力では基本的なリズムを変え
ることができないのだから(そもそも「意志」には行動を制御する働きがないことは脳研究や心理学の常識だそう
だ)、省エネなどのイデオロギー的動機によってトップダウンで勝手に夏時間制度などを押し付けることはいいかげん
止めにしてもらいたい。しかも体調を崩す人も多い中で、制度の省エネ効果や経済活性化効果は確かとは言えない。頭
でっかちな意思決定者が現実無視で安易に採用するトップダウン方式の決定が空転する典型例が、欧州連合(EU)によ
る2035年のエンジン車新車販売禁止だろう。いくらEVが気候変動対策に良いと言われても、イデオロギー的な動機付け
だけでは消費者は高いEVをすすんで購入しない。高インフレの中で収入が増えないままでは、買いたくても買えないの
が実情だろう。その程度の単純な現実をあらかじめ想定しておくことができない程度の貧弱な想像力しかない人々が政
策を決定していること自体が実は恐ろしいのではないだろうか。