民主主義と安全保障

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

バイデン米大統領が2月20日にキーウを電撃訪問し、ウクライナへの支援を改めて表明した。米政府はハリス副大統領やブリンケン国務長官の発言を通じて、中国のロシア支援を強く牽制してもいる。米国がウクライナ問題を挟んで中露と覇権を競う上で、重要性を増しているのが、欧州によるウクライナ支援の最前線に立つポーランドで、バイデン大統領もキーウの後、ポーランドに向かった。ポーランドは法の支配の原則に違反していると欧州連合(EU)から批判され続けているだけに、これはEUにとってはいささか厄介な事態だ。そもそも、EUは、北大西洋条約機構(NATO)の東の要であるトルコを重視する米国の姿勢により、 EUの価値観(民主政、人権、信教の自由など)とは相容れないトルコのエルドアン政権との関係で苦汁を嘗めてきた。そこに加えて、今度はポーランドが、米国の後ろ盾を得て、ウクライナ危機における正義の味方として勢いを増している。安全保障では結局、非民主的な国を相手にどこまで妥協できるかが問われるの が現実であり、原則や建前にこだわってばかりはいられないのが実情だが、これは欧州の問題を自力では解決できないEUの力不足が原因でもある。もし米国が内向きに転じて、欧州への関与から手を引いてしまえば、欧州はやがて中露により蹂躙されるに違いない。アジアでも類似の事態は生じ得る。うかうかしてはいられない。