ポーランドの総選挙で与党「法と正義」が過半数割れをきたした。欧州委員会は安堵に胸をなでおろしていることだろう。ただし「法と正義」がまだ第一党であることに違いはないので、根強い支持を維持できる国内的な事情があることも推察される。ポーランドに限らず、ハンガリーやスロバキアなど、ソ連の支配下にあった中東欧の国々では西側の常識が通じないと痛感させられることが多い。もちろん19世紀以前にも欧州の東西間には文化やメンタリティーの明らかな隔たりがあったから、全てがソ連の悪しき影響のせいではないだろうし、そもそも「法と正義」は反共産主義の立場を明確に打ち出しているカトリック系保守政党ではあるわけだが、そのイリベラリズムを見ると、敵視しているはずのロシアと見紛うばかりに似ているのが不思議だ。選挙後の新政権は、欧州理事会の議長を務めたトゥスク氏が率いるはずだから、親欧州的であろうとは想像するが、何年にもわたって「法と正義」政権を支持してきたポーランド国民の国民性が一朝にして変わるわけではなかろうから、今後も西欧の常識や価値観では理解不能な不思議な国であり続けるのかもしれない。EUはウクライナ危機をきっかけに、新たな東方拡大を加速する構えだが、反ロシアであることは必ずしも民主的だったり、自由や人権を擁護する立場だったりすることを意味しない。根っこの部分ではむしろロシアやベラルーシに近い精神性を持つ国々を受け入れるに際しては、くれぐれも慎重であってもらいたい。