モロッコのモハメド6世国王が31日に即位25周年を迎える。この機会に、フランスのマクロン大統領は国王宛てに書簡を送り、西サハラ問題でモロッコ寄りの立場を表明した。フランス政府にとって大きな方針転換となる。西サハラ問題でモロッコと対立する隣国のアルジェリアはこの書簡に強く反発し、在仏アルジェリア大使の召還を決めて抗議した。
モロッコの南側に位置する西サハラは、モロッコ帰属に反対する独立派による運動が古くからあり、現在に至るまで法的な地位が確定していない。アルジェリアは西サハラの独立派を支援しており、これが両国の間の根深い対立の原因になっている。国連の仲介の下で、住民投票による解決を探る旨が取り決められたが、これはいまだに実現しておらず、解決に至らないままにらみ合いが続いている。そうした中で、米国は2020年12月に、モロッコとイスラエルの国交正常化の引き換えという形で、モロッコが2007年に提示した「自治プラン」の支持に転じた。それ以来で、モロッコは欧州諸国に対しても支持を求めて外交圧力を強めており、軋轢を経て、これまでにスペインなど数ヵ国の切り崩しに成功していた。マクロン大統領は今回の書簡で、モロッコの「自治プラン」が、「公正で持続的な、交渉を経た政治的解決に至る唯一の基盤」であると認め、さらに、「西サハラの現在と未来はモロッコ主権の枠内に存する」とし、西サハラのモロッコ領有権を承認すると明確には述べていないものの、事実上の承認を与えると解釈できるような表現を用いて、モロッコ側に寄り添う姿勢を示した。
仏政界では、右派(サルコジ元大統領や、入閣したダティ文化相、さらに大統領派に協力するフィリップ元首相など)がモロッコ寄りの姿勢を示しており、その圧力に配慮して、マクロン大統領は今回の方針転換を決めたものと考えられる。予想通りにアルジェリア政府はこれに激怒し、「フランスは西サハラ人民の自決権を否定し、国連が展開してきた努力に背を向けた」などとするコメントを発表。テブーン大統領は今秋にフランスの公式訪問を計画していたが、その実現の可能性は遠のいたとみられている。