パリ市内の公営観光案内所がすべて閉鎖に

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パリ市の公設観光案内所が12日付で姿を消した。最後に残っていた15区ジャックシラク河岸にある施設が閉鎖された。
フランスでは、市町村が設立・運営する「オフィスデュトゥーリスム」と呼ばれる観光振興機関があり、地元に案内所を開いている。観光パンフレットを配布したり、観光客にアドバイスを提供するなどして観光の活性化を図っており、定番の土産物なども販売している。パリ市の観光振興機関は「パリ・ジュテーム」を正式名称とし、2017年初頭の時点では、市内に5ヵ所の案内所を運営、年間42万4000人の観光客に対応していた。しかし、インターネット時代になり、客足が鈍るなかで、次々に案内所は閉鎖されてゆき、最後に残った15区の案内所も開店休業の状態に陥っていた。施設を維持するには改装に投資が必要となったことから、閉鎖に踏み切った。
パリ・ジュテームは職員数が80人に上り、2023年には58万ユーロの赤字を出していた。最後の案内所の閉鎖に伴い、人員を一部削減する。インターネットサイトを通じた観光情報の提供など事業は継続する。パリの空港にある観光客向けの案内窓口は維持されるが、こちらはパリ・ジュテームではなく、パリ首都圏(イルドフランス地域圏)が運営している。
パリ市の撤退については、時代の流れでやむなしという意見がある一方で、全国のオフィスデュトゥーリスムが作る連合会ANDトゥーリスムのビラン会長は、案内所に立ち寄った観光客は訪問先を見直すなどしており、観光業の付加価値向上に果たす役割が大きいと述べて、撤退は逆効果になると主張している。