シルクロードと一帯一路構想

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

かつてシルクロードは東の漢帝国と西のローマ帝国を結び、ユーラシア大陸を横断する交易路として栄えた。これを復活させて、ユーラシアとその近隣諸地域にまたがる広大な経済圏を構築し、中国が再び世界経済の発展をリードすることを目指したのが習近平の一帯一路構想だから、ローマ帝国の末裔であるイタリアがこれに参加したのは少なくとも理念上は理にかなっていたかも知れない。しかし、当初の期待に反して、「債務の罠」をはじめとする様々な暗黒面が露呈した現在、さすがのイタリアも目が覚めたのだろう。ついに正式に離脱に踏み切った。もちろん中国の不興をかっているが、ほかのことはともかく、一帯一路からの離脱を決定したのはメローニ政権の手柄だ。イタリアはもちろんのこと、EUもかつての強大なローマ帝国の再来ではない。ローマ帝国は地中海世界全体を支配していたが、EUは地中海を渡って南から侵入してくる不法移民の大群に押しつぶされかけており、地中海での主導権を失った。むしろ北からのゲルマン人の大移動で滅びかけている末期のローマ帝国に似ているのかも知れない。イタリアは欧州統合の創設国の1つでありながら、お荷物的な存在であり続けているが、英国が抜けた今、ドイツとフランスに次ぐEU第三の大国にふさわしいリーダーシップを示してもらいたいものだ。手始めに、メローニ右派政権が優先課題とする不法移民対策でどこまで効果的な対策を実行できるかを見守りたい。EUの命運がかかっている。