マクロン大統領の「文明後退」発言が物議に

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マクロン大統領は24日の閣議の際に、暴力的な事件が増えていることについて、いかなる暴力も正当ではないとし、「文明の後退という流れに対抗すべく、掘り下げた努力をしなければならない」と言明した。「文明の後退」という言葉は、極右系の勢力がよく用いるものでもあり、大統領の発言は物議を醸している。
大統領は25日には、警官3人が職務中に逆走自動車にはねられて死亡するという事件が起きた北仏ルーベー市を訪問し、追悼の念を表明した。最近ではこのほか、ランス大学病院で精神異常者に看護師が刺殺される事件が発生。また、極右勢力により脅迫を受けたサンブレバンレパン市の市長が辞任するという事件もあり、市長のような地方議員に対する暴力事件が増えていることが問題視されていた。これらは背景や原因が異なる事件ではあるが、大統領はこれらを、社会の暴力化が進んでいることの現れとしてまとめて、「文明の後退」への対策に努める考えを確認した。
「文明の後退」という言葉は、移民の大量流入により文明と民族アイデンティティが浸食されるという文脈で、極右勢力がよく用いてきたものであり、極右系の作家ルノー・カミュ氏は2011年に刊行した著作のタイトルにも用いている。大統領に近い筋では、暴力事件の頻発を移民と結びつけるという趣旨でこの言葉が使われたのではないと釈明している。