フランスの同性婚解禁法、23日で10年に

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フランスで同性婚解禁法が採択されてから、この4月23日でちょうど10年が経過した。ルモンド紙はこの機会に、同法の成立に深く関わった関係者の声を紹介するとともに、当時を振りかえる記事を掲載した。
同性婚解禁は当時のオランド大統領(社会党)の公約の一つであり、エロー首相(当時)は2012年7月3日、「2013年1-3月期に同性婚を解禁する」という政府の意向を発表した。これにカトリック教会や保守支持派が強く反対、市中では、子供を守るという大義のもとに、反対派が結成する団体「みんなのデモ」を中心に抗議行動が展開された。2013年1月13日に実施の最大のデモには、34万人(主催者側発表では100万人)が参加した。
フランスを二分しての大議論になったように思われる同性婚の是非であるが、法案の報告者であったビネ元下院議員(社会党)は、同性婚解禁に関する提案について、当初は予想以上に一般的な国民の関心が得られなかったと回想する。社会学者のテリー氏によると「実際には当時の社会はすでに同性婚を受け入れる用意があった」。しかし、カトリック教会などは「同性婚」そのものよりも、むしろ、同姓カップルが子供を持ち家庭を形成することに反発した。テリー氏は、議論の焦点がずれてしまったことと、カトリック教会を含む宗教勢力の大規模な動員により議論のトーンが変わってしまったと分析、他の関係者からは「強い反発に対するオランド大統領の曖昧な態度が無駄に論議を長引かせた」といった声も寄せられた。
最終的に、国会での合計136時間56分の審議を経て成立した同法からは、LGBT擁護団体が大きな期待を寄せていた「同性カップルにも体外受精の権利を保障する」、「同性カップルによる養子縁組を認める」といった措置は除外された。同性カップルへの体外受精や養子縁組の権利付与は、8年後の2021年8月2日に公布される「バイオエシックス法」を待つことになる。とはいえ、リエステル国会関係担当相は、賛成331人対反対225人にて法案が可決された時のことを、「人々の人生を変えることに貢献したという感慨に満たされた」と振り返る。同相は同性愛者であることを公言しており、当時のUMP(現共和党)の中で法案を支持した下院議員は同相とアパリュ元住宅相だけだった。
ルモンド紙によると、ここ10年で7万件の同性婚が成立した。