仏ラクタリス、食品部門で仏1位・世界10位に躍進

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乳製品大手の仏ラクタリスは2022年の売上高が前年比28.4%増の283億ユーロに達し、同業の仏ダノン(13.9%増の277億ユーロ)を抜いて、フランスの食品部門で首位に躍進し、世界の食品部門でも10位につけた。なおダノンは世界11位。世界首位はスイスのネスレで、売上高は950億ユーロ。
ラクタリスの増収は、原材料価格の高騰に伴う価格の引き上げに負うところもあるが、企業買収の成果でもある。仏西部ラバルでベニエ家による一族経営のチーズ生産会社として1933年に創業した同社は、当初から積極的な企業買収で事業を拡大してきた歴史があり、創業者の孫であるエマニュエル・ベニエ現CEOが2000年に就任して以後も事業の拡大と国際化を継続し、最近の20年間に120件もの企業買収を実施し、売上高を2000年の5倍に引き上げた。
2022年は売上で競合ダノンを凌いで仏最大手に躍り出た飛躍の年ではあったが、ベニエCEOはむしろ、牛乳、包装、エネルギーなどのコストが大きく増大したにもかかわらず、これを全面的には製品価格に転嫁できなかったために利益幅が縮小した「難しい年だった」と評価している。営業利益は0.4%減の13億ユーロ、純利益は14%減の3億8400万ユーロにとどまり、営業利益率は前年の5%から4.6%へと低下した。利益率ではダノンと比べて見劣りする。
ラクタリスは世界51ヵ国に270ヵ所の生産拠点を展開し、従業員数は8万5000人。150ヵ国で製品を販売している。しかし、非上場企業であり、また社名は製品には表示されていないため、一般消費者の間での認知度は比較的低い。これは目立つことを意図的に避けてきたベニエ家の方針にもよるものだが、2017年から2018年にかけて同社製の粉ミルクがサルモネラ菌汚染問題が発生したことを機に、同社の経営の不透明性が批判を浴びたため、政府からの圧力もあってベニエCEOが初めて記者会見を開き、また、以後は毎年業績も公表している。牛乳の買取価格を引き上げて生産者との関係改善にも努めている。なお、他の乳製品メーカーが植物性乳代替品に事業を広げている中で、ベニエCEOは本来の乳製品にこだわる姿勢を貫いている。