仏政府、ルノー・日産アライアンスの再編を支持

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報道によると、マクロン仏大統領は1月9日夜に岸田首相を大統領府に迎えて会談した際に、ルノー・日産アライアンスの再編を巡る交渉についても話し合い、ルノーの主要株主である仏政府(株式の15%を保有)は再編計画に反対しない立場であることを首相に説明した。
アライアンスの現行の体制では、ルノーは日産自動車の株式の43%を保有し、日産はルノーの株式の15%を保有しているが、日産には議決権はない。ルノーは、日産への出資比率を15%に引き下げ、28%の株式を信託に移して競合メーカーやアクティビスト・ファンドによる買収を防止し、また日産が保有するルノー株式に議決権を付与することで、より対等な関係に移行することを提案して日産と交渉を進めている。ルノーはこの資本提携の変更と引き換えに、EV・ソフトウェア事業の分離により設立する「アンペール」への出資などを日産に求めている。両社の交渉は当初の予想以上に難航し、2022年末までに妥結しなかった。現状では1月末に合意の成立が期待されている。
日産側は、仏政府が政治的な思惑からこの再編に横槍を入れることを強く警戒しており、マクロン大統領の説明はこうした懸念を払拭する狙いがある。これは、過去に仏政府の一方的な介入により日産がルノーとの関係で煮え湯を飲まされた経緯があるためで、保有するルノー株式に議決権がないことや、2015年にフロランジュ法の制定により仏政府の議決権が2倍に強化されたことなどに日産はいまも苦々しい思いを抱いている。そのため、大統領は今回の会談で、仏政府がアライアンスの再編に政治的な介入を行わないことを首相に保証した。また報道によると、ルメール経済相も日本の経済産業省に宛てた書簡で、仏政府が再編を支持していることを伝えた。これは特に日産の側が、国同士の約束を望んでいたことに配慮した対応という。
一方、「アンペール」への出資に関して、日産は自社の特許が「アンペール」の事業に参画するIT企業などに流出することを警戒しており、ルノーはこの点でも譲歩して、「アンペール」に持ち寄る特許を日産が自ら選択することを認める方針を示唆している。
ルノーがエンジン・HV事業を分離して中国の自動車大手ジーリー(吉利汽車)との折半出資により設立する「ホース」のほうには、日産は出資せず、自社のHV技術も提供しない方針。日産はジーリーとの協業による知財権の侵害を警戒し、「ホース」への参加には当初から難色を示していた。
なお、ルノー側ではスナール会長とデメオCEOが二人三脚で交渉にあたってきたが、合意成立が難航していることにCEOが苛立ちを強めているといい、最終的な交渉は会長が中心になって進める模様。