アンティル諸島の海外県における農薬汚染に関する捜査で、パリ地検は25日、不起訴を請求した。時効が成立していると判断した。
アンティル諸島の海外県では、バナナ栽培のために農薬クロルデコンが1993年まで用いられていた。本土では1990年に使用が禁止されたが、海外県では3年間にわたり使用が継続された。クロルデコンが用いられていた海外県では、がんの罹患率が明確に高く、住民10万人当たりの前立腺がん罹患者数はマルチニークで227人と、世界でも最も高くなっている。この問題は、海外県において中央政府への不信感を煽る政治問題と化しており、国の責任を追及する被害者らの訴えにより始まった事件の捜査の行方が注目されていた。
捜査は、予審と呼ばれる、担当予審判事が起訴の是非を決めるために行う裁判上の手続きの段階にある。予審判事はこれまで、容疑者指定を行っておらず、被疑者不特定のまま捜査が続けられていた。パリ地検は、捜査を経て、毒物投与などの容疑については時効が成立していると考えられるとし、有害物質の投与については、犯罪を構成する要件を満たしていないとして、不起訴が妥当とする判断を下した。起訴の是非は最終的には予審判事が決定するが、起訴に至る可能性はこれで一段と遠のいた。なお、政府は現地の不満を緩和する目的で、2021年末に、クロルデコンへの暴露を職業病と認定することを決定している。