マクロン大統領は28日夜、関係閣僚と与党の代表を集めてワーキングディナーを開いた。年金改革について協議した。会合に出席したボルヌ首相は29日朝、政労使代表を集めた協議を行った上で、年金改革案を今冬の末までに準備する方針を明らかにした。協議はデュソプト労相の手配で10月初頭より開始される。
年金改革は、マクロン大統領が選挙前に掲げていた施策だが、その実行の方法を巡っては、与党内で足並みの乱れがあった。社会保障会計法案に修正案の形で追加するとの案も浮上していたが、これには、協議を尽くさないで重要な改革を実現するのは誤りだとする意見が、中道政党MODEMのバイルー党首などから出されていた。マクロン大統領は、そうした意見に配慮する形で、年金改革の内容を詰める協議を政労使の代表を交えて行うことに同意した。
マクロン大統領は、選挙キャンペーンにおいて、2031年時点で定年年限(年金受給額の欠け目なしに退職できる年齢)を、62才から65才へ引き上げることを公約に掲げていた。引き上げ幅を64才にとどめる可能性については含みを残している。ボルヌ首相は、協議における対象として、定年年限の引き上げに加えて、就労期間が長い人を対象とした措置、就労条件が厳しい人に対する配慮、退職に近い人のための措置と就労から年金受給までの移行期間に関する措置、年金特殊制度(公社の職員等に適用される個別の年金制度)、年金最低支給額(拠出期間が規定に達している場合)の見直しを含めると説明。年内に協議の成果をまとめたいとし、関連法案を策定してそれを冬のうちに可決することを目指すとした。改革の実施を2023年夏季に始めるとの日程も再確認した。
与党勢力は国会で過半数を失っており、法案の可決には野党の一部の賛成を取り付けることが課題となる。採決を経ないで法案を成立させる方法(「49-3」と呼ばれる)もあるが、この方法を用いた場合、内閣不信任案が提出され、それが採択されると法案は不成立となる。野党側が団結すると内閣不信任案が採択される目も出てくる。マクロン大統領は28日夜の会合の機会に、不信任案が採択されるなら即時に解散総選挙を決めると言明したという。