イタリア政府、ITAエアウェイズの民営化でエールフランスKLM陣営を選択

投稿日: カテゴリー: 日刊メディアダイジェスト欧州レポート

イタリア政府はこのほど、ITAエアウェイズ(旧アリタリア航空)の資本提携の交渉先として、米投資ファンドCertaresを選択したことを明らかにした。Certaresには、エールフランスKLMと米デルタ航空が協力している。ITAエアウェイズの100%株式を保有するイタリア政府との間で独占交渉が開始される。
ITAエアウェイズには、ドイツのルフトハンザ・グループが伊スイス籍の海運大手MSCと結んで80%株式の買収を提案していた。80%株式に対して8億5000万ユーロを提示していた。これに対して、Certaresは56%株式に対して6億ユーロ弱を提示しており、ルフトハンザ・MSCの方が踏み込んだ内容だった。イタリア政府は、より小幅な売却を選択し、取締役会における役員2人(全5人)を確保し、戦略的決定に対する拒否権を確保することを選んだと考えられる。
旧アリタリア航空の救済を経て2021年10月に発足したITAエアウェイズは、66機の航空機隊を有し、64都市を結ぶ路線を運航している。エールフランスKLMとデルタ航空にとっては、北米・欧州間の路線を強化すると共に、スカイチームに加わるITAエアウェイズを引き止めることができるという利点がある。半面、エールフランスKLMは、新型コロナウイルス危機の際に得た公的支援を完済しておらず、規定により現状では同業他社への10%を超える出資を封じられていることから、当面はITAエアウェイズへの直接出資は予定していない。
ITAエアウェイズはまだ赤字から脱しておらず、経営環境は依然として厳しい。買収が実現したとしても、立て直しに多大な努力が必要になる。また、イタリアでは9月に上下院選挙が行われる予定で、その後に発足する新政権との間ですんなりと交渉がまとまるとは限らない。