欧州単一効特許制度の導入から1年

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欧州特許庁(EPO)が欧州単一効特許制度の運用を開始してからこの6月1日で1年間が経過した。欧州単一効特許は、欧州統一特許、欧州単一特許などとも呼ばれ、ひとまず欧州連合(EU)加盟国のうち17ヵ国が導入に応じた。各国ごとの有効化(バリデーション)を必要とせず、一括して効力が認められる制度で、出願者にとっては費用の削減などが見込める。従来制度において、4ヵ国を選んだ欧州特許の出願と同程度の費用で、17ヵ国全域を対象とした保護が受けられるとされる。この導入と並行して、欧州単一特許裁判所(UPC)が発足し、関連の係争を裁く体制が整えられた。
導入に参加したのは、フランス、イタリア、ブルガリア、スロベニア、オーストリア、ドイツ、ポルトガル、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、マルタのいずれもEU加盟の17ヵ国。報道によると、新制度の導入以来で、2万7000件を超える単一効特許の出願がなされた。EPOへの出願全体の23%を単一効特許が占めたことになる。出願者の所属国別では、デンマーク(出願全体に占める単一効特許の割合が50%)とポーランド(同50%)、そしてスペイン(同40%)が特に利用に熱心だった。ちなみにポーランドとスペインは導入に合流していない。出願の3分の2を欧州が占め、それに米国、中国、日本、韓国が続いた。他方、欧州単一特許裁判所では、1年間で373件の提訴を受け付けた。うち134件が権利侵害の案件、35件が特許無効の申し立てだった。