新石器時代の人骨のDNA鑑定、7代に渡る家系図の作成に成功

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仏オーセール市(ヨンヌ県)近くのギュルジ村で発掘された新石器時代の人骨のDNA鑑定結果がこのほど科学誌ネイチャーに掲載された。7代にわたる血縁関係を跡付けることに成功した。
研究論文はRivollat(ヘント大学)らが執筆した。2004年から2007年にかけて発掘された128体の人骨について、母系を推定できるミトコンドリアDNA鑑定と、父系を推定できるY染色体のDNA鑑定を実施。同一の系統に属し、7世代に及ぶ64体と、別の家系に属する5世代に及ぶ12体を同定した。
これらの人々は紀元前4850-4500年にかけて生きていた。これは、農耕の開始に伴い始まった新石器時代に相当する。系統を調べたところ、女性は子どもを除いていずれも外部から来ており、これは、外部世界との人的往来があったことと、意識的に外部との間で女性が「交換」されていたことを示唆している。外部から来た女性の間に血縁関係はなく、「交換」は、同族結婚を避けるための工夫だったと考えられる。また、父又は母が異なる兄弟・姉妹はなく、これは、一夫多妻制や再婚などがここでは行われていなかったことを示している。これはまた、「婚外交渉」が見受けられないということでもあるが、この点については、婚外子が社会から排除されたり、同じ場所に埋葬を認められなかったりした可能性もあり、本当のところはわからない。歯に残るストロンチウムの痕跡の有無から、初代の人物がここではない別の場所で生きていたことも判明しており、これは、子どもの代が親の人骨を携えて当地に根を下ろし、埋葬をしたことを示している。また、7代目はいずれも子どもの人骨であり、これは、死んだ子どもを埋葬した上で、一族がどこか別の場所へと再び旅立ったことを示している。こうした移動の理由についてははっきりしたことはわかっていない。こうしたことを考え合わせると、7代のうち、実際に同地に定住していたのは3-4世代だけであり、その期間は84-112年と比較的短かったと研究者は推定している。