13日に首相に指名されたバイルー氏は、同日中にバルニエ首相との間で引継ぎ式を行い、組閣人事に着手した。14日には、ブロンピベ下院議長、ラルシェ上院議長、仏中銀のビルロワドガロー総裁、会計検査院のモスコビシ長官らと会談して意見を交換した。内閣官房の人選を進めると共に、16日からは、極右RNのマリーヌ・ルペン下院議員団団長を含めて、政治勢力の代表と会談し、組閣人事を詰めるための協議を行う。
マクロン大統領は、自らに近いルコルニュ軍隊相を首相に指名することを望んでいたとされるが、バイルー氏に押し切られた格好で、同氏の首相指名を受け入れたと報じられている。バイルー氏は、2017年の大統領選挙前にマクロン候補支持に転じて以来、政権の番頭役になることを望んでいたとされるが、自らが率いる中道政党MODEMの架空雇用疑惑などがあり、果たせずに傍流に退いていた。下院で大統領支持勢力が過半数を失い、政局運営が厳しい中で、ようやく野望を果たしたことになる。
バイルー新首相は特に、持論である下院選挙への比例代表制の導入を推進したい考えで、これを土産に政局運営への一定の協力を幅広い方面から取り付けることを望んでいる。バイルー新首相はまた、増大する公的債務への対応を重要課題として以前から掲げていた。予算諸法案を巡る対立がバルニエ内閣退陣の直接の原因という状況で、この問題でバイルー氏に打つ手があるのか、注目される。組閣人事では、左派系の人材を登用をするつもりがあるのか、またそうだとしてそれを果たせるのかが注目される。左派の協力を取り付けて多数派を確保する(または、反対勢力が多数派にはならないようにする)のが、政局の安定化に向けたシナリオの一つだが、保守「共和党」は、共和党所属でタカ派のルタイヨー内相の留任を含めて、バイルー新首相に組閣人事上の注文をつける構えで、新首相が各方面の要求を満足させる解決を見出すことができるとは限らない。社会党のフォール第一書記は14日の時点で、左派の人材が首相にならない限り、社会党からの入閣はないとする従来の主張を繰り返した上で、左派連合の筆頭である左翼政党「不服従のフランス(LFI)」と同党を率いるメランション氏に対して距離を置く姿勢を同時に示した。