S&P、仏長期債務を「AAマイナス」に1ランク格下げ

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格付け会社S&Pは5月31日夜、フランスの長期債務の格付け見直しを発表した。「AA」から「AAマイナス」に1段階引き下げた。格付け見通しは「安定的」とした。
最近では、フィッチが2023年に格下げを決定したが、フィッチとムーディーズはともに数週間前に格付け据え置きを発表していた。S&Pが格下げを決めたことは、欧州議会選挙の投票日を目前に控えて、マクロン政権にとって政治面での打撃が大きい。
S&Pは、仏財政赤字の対GDP比が2023年に5.5%となり、当初目標を明確に上回ったことを指摘。政府は2027年に同比率を3%未満に引き下げることを目標に設定しているが、それを実現するめどが立っていないと指摘。フランスの公的債務残高の対GDP比が、ユーロ圏においてギリシャとイタリアに次いで3番目に高いとも指摘し、国債費の対GDP比も、2023年の3.3%に対して、2027年には5%まで上昇するとの見方を示した。政治的な安定性にも問題があり、しかるべき政策を推進する上での政府の能力に疑念があるとも指摘した。
ルメール経済相は格下げ決定について、フランスの格付けは上から3段階目とまだ高いと説明。財政収支の悪化はコロナ危機以来の経済支援が原因であり、この支援によって経済を支えていなかったら、さらに重大な結果になっていたはずだとして、政府の政策を正当化した。野党勢力は格下げについて、それぞれの立場からマクロン政権を非難。保守野党の共和党は、政府が歳出と債務の削減を拒否してきた結果がこれだと非難、左翼政党LFI(不服従のフランス)は、政府が格下げ決定を口実に予算削減を進める恐れがあるとし、収支悪化の原因は、富裕者等を優遇する不公平な税制にあると主張した。