パリ・ベルリン間高速鉄道、ストラスブールを経由する可能性は希薄

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仏国鉄SNCFはドイツ鉄道(DB)との提携により、2024年12月にパリ・ベルリン間の高速鉄道の運行を開始することを計画しているが、その経路を巡って仏政府と両社の間で対立が発生している。ボーヌ仏運輸担当相はSNCFに対して、欧州議会の本会議場があるストラスブール(仏)を通過する経路を要求しているが、同社のファランドゥCEOは同相への回答で「欧州連合(EU)においてストラスブールが占める独特の象徴的位置は十分承知しているが、ザールブリュッケン(独)を経由するパリ・フランクフルト路線の延長だけが技術的・経済的に実現可能であることを確認済み」と説明し、政府の要求を拒否した。
パリ・ベルリン間高速鉄道はDBのフランクフルト・ベルリン高速鉄道路線の運行開始に連動して開始することを予定しており、パリ・フランクフルト路線を整備して、フランクフルト・ベルリン路線に接続することになる。現在、パリ・フランクフルト路線はストラスブール経由、ザールブリュッケン経由の両方が存在する。
仏政府案では、ストラスブールとカールスルーエ(独)を通過する南回りの路線が構想されているが、SNCFとDBはメッス(仏)及びザールブリュッケン(独)を経由する北回りの路線を計画している。どちらの路線でも、パリ・ベルリン間の所要時間に大差はないが、DBによると、ザールブリュッケン経由の方が長距離路線の鉄道運行が多く、ストラスブール経由よりも整備がはるかに容易であるという。
ちなみに、既存のパリ・フランクフルト路線では「ICE」以外に、SNCFの高速列車「TGV INOUI」も用いられているが、「ICE」がフランクフルト・ベルリン間に新たに整備された線路区間にも、フランスの線路にも適応できるのに対して、「TGV INOUI」は現状ではフランクフルト・ベルリン間の新路線に適応できていない。
なお、これとは別に、2023年12月にはパリ・ベルリン間で夜行列車が運行を開始する見通しであり、これは高速鉄道ではないが、ストラスブールを経由する。