ユーロ圏のインフレに減速の兆し

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ドイツとスペインの3月のインフレ率が前月と比べて顕著に減速し、ユーロ圏のインフレが峠を越したとの見方が強まった。
独連邦統計局(Destatis)の速報によると、ドイツのインフレ率は3月に前年同月比で7.4%となり、1月と2月の8.7%を下回った。また欧州連合(EU)の基準によるインフレ率は3月に7.8%となり、2月の9.3%をやはり下回った。
3月の消費者物価動向を部門別に見ると、エネルギー価格の上昇率(年率)が3.5%にとどまり、大きく減速したことが目立つ(1月には23.1%、2月には19.1%の上昇を記録)。一方、食料品価格の上昇率は22.3%と高止まりしており(1月に20.2%、2月に21.8%)、インフレを牽引する最大の要因となっている。
またスペインの国立統計局(INE)の速報によると、同国のインフレ率は3月に前年同月比で3.3%となり、1月の5.9%、2月の6.0%を大きく下回った。INEによると、2022年3月にはウクライナでの戦争の影響で電力・燃料価格が急騰し、これとの比較で、2023年3月には低下を記録したことが、インフレの減速につながった。EU基準のインフレ率は3月に3.1%となり、前月と比べて3ポイント低下した。ただし、エネルギー価格など変動の大きい要因を除外したコアインフレ率は7.5%に達しており、2月と比べて0.1ポイント低下したものの、高止まりしている。
欧州中央銀行(ECB)のレーン理事(チーフエコノミスト)は3月29日、独ツァイト誌とのインタビューで、原材料などの価格圧力が製品の最終価格に転嫁されると同時に賃上げも加速しており、ユーロ圏のインフレはおそらく最も強度が大きい段階にあるとの見方を提示した上で、年末にかけてインフレは大きく減速すると予測した。ECBは2022年7月以来で3.5ポイントの利上げを実施したが、今後もインフレ抑制のための追加利上げを実施する方針を示唆している。