仏文化省下の専門機関CNN(国立音楽センター)はこのほど、音楽ストリーミング・サービスの再生回数不正に関する報告書を公表した。架空の再生実績を稼いで利益を上げようとする再生回数不正について、公的機関が報告書をまとめるのはこれが初めて。
CNNは2019年に発足した専門機関。文化省は2021年6月にこの報告書の作成をCNNに依頼した。報告書は、フランスでストリーミング大手であるDeezer、Spotify、Qobuzの3社、そしてレコード大手5社(ワーナー、ユニバーサル、ソニー、Believe、Wagram)の協力を得て調査を行った。アップル・ミュージックとユーチューブは調査にまったく協力せず、アマゾン・ミュージックは2022年分のデータのみ提供など、大手業者はむしろ調査に非協力的だった。
調査によると、2021年には10億-30億回の水増し再生回数が検出された。年間再生回数は1000億回に上り、この不正回数は全体の1-3%に相当することになる。調査に協力したプラットフォーム別では、Deezerが2.6%、Spotifyが1.1%、Qobuzが1.6%だった。実際の不正の規模はこれより大きい可能性がある。また、Deezerでは、2022年に入り、不正回数率が5%まで上昇しており、不正は拡大する傾向にある。
不正は人気の音楽ジャンルにおいて多い。Spotifyの場合、人気ジャンルのラップとR&Bに不正の92%が集中していた。逆に、再生回数トップ1万曲における不正はむしろ少なく、Spotifyで0.25%、Deezerでは0.65%にとどまった。とはいえ、人気の曲に不正がないわけではなく、特にランキング上位が狙える期間に的を絞って水増しするような事案が見受けられるという。手口としては、偽アカウントを通じてボットにより稼がせる古典的な手法から、サイバー攻撃による乗っ取りアカウントを悪用する、さらに、プレイリストに無関係の楽曲を置いて、再生数を稼いでその楽曲からの利益を得るというものまで、様々ある。