パリの女子殺害事件

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

パリ市の19区で、12歳の少女が帰宅途中で惨殺されるという悲惨な事件が発生した。24才の女性ホームレスが被疑者として逮捕され、犯行を自供した模様だが、動機などはまだ謎のまま。この被疑者については、ファーストネームとアルジェリア生まれであることが報じられている。また死体遺棄に協力したと思しい43才の男性が共犯の疑いで逮捕されたが、こちらもアルジェリア出身だという。両被疑者がアルジェリア人であるということを報じたメディアは少数派で、多くのメディアはその点には触れていないが、これについて右派系のジャーナリストや評論家などからは、「アルジェリア人や移民がスティグマタイゼーションの対象となることを避けるという過剰な配慮により現実を隠蔽する行為だ」との批判が出ている。さらに、もしも被害者がアフリカ系移民で、被疑者が白人のフランス人であったなら、左派系メディアや政治勢力が轟々の非難の声をあげるだろうが、アフリカ系外国人が白人のフランス人を惨殺しても、少数派の権利に忖度してメディアも政界も消極的なのはいかがなものか、と批判する意見もネット上では散見される。
フランスのメディアの大半にこうした傾向が見られることは確かで、筆者はこういうPCな忖度や配慮がかえって社会問題に関するオープンでタブーのない抜本的な議論を封殺して、息苦しくしていると感じることも多いのだが、翻って、被疑者が仮に日本人だった場合に、その国籍を大々的に報じて欲しいかと問われれば、ちょっと(だけだが)迷ってしまう。かつて、佐川一政なる日本人留学生がパリでオランダ人女性を殺害してその死体の一部を食べるという事件が起きた直後に、筆者はスイスから鉄道でフランスに入国したのだが、税関で「日本人か、さぞオランダ人(の肉が)好きなんだろうな」などと嫌味を言われたことを今でも覚えている。その税関職員は同僚によりたしなめられていたから、すべての職員が同じようなことを考えていたわけではないかも知れないが、スティグマタイゼーションという現象は確かにある。そして、当時のフランスのメディアはフランスに住む日本人への影響には一切配慮してくれなかったようだ。