10月13日発表のINSEE調査によると、家計の財務状況は2022年8月の時点で、新型コロナウイルス危機前の2019年と比べてわずかな改善を示している。政府の支援措置の効果もあり、家計が全体として危機を良好な状態で乗り越えることができたことを示唆している。ただし、足元のインフレ亢進が影を落とすことが懸念される。
INSEEはこの調査で、銀行大手のクレディミュチュエルおよびラ・バンク・ポスタルの顧客の匿名化されたデータを分析し、家計の財務状況を調べた。この調査では、「金融弱者」を示す指標として、「月末に当座貸し越しがある世帯」、「資産額(債務控除前)が少ない世帯(2019年時点で1209ユーロ未満に設定し、その後はインフレ率により補正)」、「当座貸し越しの月間平均日数が5日を超える世帯」のそれぞれが全体に占める割合を選んで調べたが、そのいずれも2019年比で改善が見られた。ただし、例えば「月末に当座貸し越しがある世帯」の割合は、2021年年頭以来ではわずかな上昇を記録しており、コロナ危機からの脱出に伴い始まった物価上昇の影響が、金融弱者から始まって広がりつつあることをうかがわせている。また、低所得者が占める比重がより大きいラ・バンク・ポスタルでは、2021年夏から金融弱者指標が悪化に転じている。
コロナ危機に伴う貯蓄資金の積み上がり効果をみると、2020年1月から2022年8月にかけて、所得上位25%の世帯では資産額(債務控除前)が銀行により22-25%増を記録。所得下位の世帯では増加率は12.6-16.4%となっており、富裕層で効果が大きかったことがわかる。2021年7月以来の物価上昇の効果による金融資産(債務控除前)の目減りは全体で1%であるのに対して、低所得層では3.4%と大きく、これは、消費支出の構成において低所得者層の方がインフレ亢進の影響を受けやすいことと関係がある。