欧州委員会、今冬にガス消費量15%削減を提案

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欧州委員会は7月20日、欧州連合(EU)加盟国に対し、2022年8月-2023年3月にかけてのガス消費量を過去5年間(2016-2021年)の同時期に比べて15%削減するために全力を尽くすことを求めた。フォンデアライエン委員長は、「ロシアはガスを武器のように用いている。欧州は、露産ガスの供給が完全に停止した場合に備えなければならない」と述べた。加盟国には、9月末までにガス供給緊急時対応に関するプランをアップデートし、目標達成に向けた道筋を示すことが求められる。EUがガス供給不足の重大なリスクを認めた場合は、加盟国と協議の上で、15%削減の目標が義務化される可能性がある。26日にはエネルギー相会合が開かれ、欧州委員会の提案について討議する予定。
欧州委員会は、「15%削減」を通じてガス消費量450億立方メートルの削減が可能だと予測(ロシアによる2020年のガス供給量は1530億立方メートル)。その内訳として、▽公共機関の建物や商業施設、個人宅における暖房、空調の使用量削減を通じて110億立方メートル、▽再生可能エネルギーの利用増加を通じて110億立方メートル、▽産業企業の消費削減を通じて72億立方メートル、などを挙げた。
欧州委員会は、ガス消費量削減に向けた対策の例として、▽ガス消費を削減する企業向けの補償に関する入札、▽化学などガスを原材料として用いる産業については、段階的にガス需要を削減する、▽公共機関の建物における冷暖房に制限を設ける、▽原子力発電所、石炭、石油火力発電所を一時的に利用する、などを提案した。
この提案に対しては、スペイン、ポーランドといった国が早速反対を表明している。
なお、バルト海を経由して露産ガスを欧州に輸送するノルド・ストリーム1ガスパイプラインは7月11-21日にかけて定期保守作業のために稼働を停止している。露プーチン大統領は、同ガスパイプラインが21日朝に稼働を再開するが、カナダにおいて保守作業を受けていたシーメンス製タービンが返還されない場合、来週は通常の20%の能力で稼働することになると述べた。露ガス大手ガスプロムは、ノルド・ストリーム1の定期保守作業以前から、稼働能力を通常の40%まで引き下げており、これが更に縮小されることになる。大統領は、もう一つのタービンが7月末に定期保守作業を受ける必要があることをその理由として挙げた。